私が幼少期のころ、我が家では春の米の田植え作業や秋の収穫作業など一大仕事を終えたら決まって、放し飼いの鶏を〆て、特製のだまこ鍋を振る舞う習慣がありました。適度の噛みごたえのある鶏肉とゴボウの出汁が美味しく、特に細かい粒状の黄金色した脂が溶け込んだスープは旨みが強く、次の日のスープが染み込んだ、だまこは旨みが凝縮されて格別に美味しかった。この、今でも私の味覚の中に永遠と残っている旨さ、それはまさに感動の記憶と呼べるものであり、ひない軒の味の原点と言えるでしょう。
親父と初めて食堂に入ったとき、親父はコップ酒とホルモンの煮込みを注文し、
私は中華を注文した(当時、ラーメンより中華と読んでいた)。
私が食べるのを見ていた赤い口紅の女店員が「ウフフ」と小馬鹿にして笑った
(子供心にも薄々小馬鹿にされた様が伝わったのだろう)。
親父が私の方を見て「箸ってこう使うもんだ。」と言って
両端を持って割ってくれた。
(割り箸を使うのは初めてで使い方を知らず割り箸2本で食べていたのだ)
そんな私が箸を使う職業を生業としているのですから、
人生わからないものです。(当店の割り箸は間伐材を使用しています。)